「コラム」 Column
埋立地で地震に強い家を建てられるか|液状化現象が起こりやすい場所の調べ方、対策や復旧は可能か
結論からお伝えすると、埋立地で地震に強い家を建てることは可能です。
ただし耐震性の高い建物を建てるだけでは地震発生時の液状化は防げず、大きな被害を受けるケースもあるため、土地などの物件選びをする際には「埋立地自体の成り立ち」「土地自体の地盤」なども確認が必須です。
今回は、東京湾に面した埋立地がある千葉市などを施工エリアとしているハウスメーカー『木ここち家ラボ』が、埋立地で地震に強い家を建てる方法を、わかりやすくご紹介します。
埋立地で土地などの魅力的な物件がある場合に、購入の価値がある物件かどうかを見極める目を持つために、ぜひ最後までご確認ください。
Contents
埋立地で地震に強い家を建てられるか

「埋立地で地震に強い家を建てられるかどうか」を判断する際に、確認するべき必須項目は、以下のとおりです。
- 3種類の埋立地と液状化現象が起こりやすい・起こりにくい埋立地の条件
- 埋立地での地震対策は「地盤改良・耐震性」両方重要
- 地震対策だけではなく「復旧力」も必須
- 沿岸部では高潮・津波被害の想定や対策も必須
3種類の埋立地と液状化現象が起こりやすい・起こりにくい埋立地の条件
埋立地で土地などの物件を購入する際に最も不安なことは、「地震による液状化で、将来使えなくなるのでは?」という点だと思います。
埋立地は以下3種類で、液状化のしやすさが異なるため、ご紹介します。
| 埋立地の種類 | 主な場所 | 液状化の観点 |
|---|---|---|
| 海底の砂を吸い上げて埋めた土地(浚渫土砂) | 東京湾沿岸で住宅地となっている埋立地の多く | 波や海流で粒の大きさが揃った細砂を、水と一緒に流し込んで埋めるため締まりが極めて緩く、最も液状化しやすい。 |
| 山砂や建設残土を運んで埋めた土地 | 内陸の造成地、旧池・旧田の埋立地 | 礫(小石)、砂、粘土、シルトが不均一に混ざっていて粒子同士が噛み合いやすく、適切に締固めて施工されていれば液状化への抵抗力が強い。 |
| ごみ(廃棄物)で埋めた土地 | 臨海部の埋立地(夢の島等)、昭和期の旧処分場跡地(公園・商業施設、一部宅地) | ビニール、木くず、プラスチック、金属、焼却灰などが複雑に絡み合い、繊維質やブロック状の噛み合わせ効果が働くため、液状化への抵抗力が強い。 ただし長期的な分解沈下、メタンガス等の発生による不同沈下の危険性がある。 |
液状化は、以下の条件が揃ったときに砂の粒がバラバラになり、砂と水がまざって地盤全体が液体のようになる現象です。
- 緩く積もった砂の地盤
- 地下水位が高い(地表近くまで水がある)
- 強い揺れ
東京湾沿岸の埋立地は上記の条件がそろいやすい土地で、例として浦安市の埋立地は、1960年代以降に東京湾の海底から採取した砂・泥をサンドポンプ(吸い上げポンプ)で送り込む工法で造成された、厚さ5m程度の人工の層です。
東日本大震災(2011年)で浦安市は震度5強が観測され、埋立地の中町・新町地区の大半が液状化し、自然地層(沖積層)からなる旧市街(一般に元町地区と呼ばれるエリア)では、一部の例外を除いて液状化は認められませんでした。
〈参考〉千葉県ホームページ「東日本大震災液状化報告書│環境研究センター」第3報:千葉県内の液状化-流動化現象とその被害の概要及び詳細分布調査結果(第3報)-浦安地区(1)-
一方で、埋立地でも液状化しにくい、または液状化が発生しても大きな被害が発生しにくい条件もあります。
埋立地は時間が経つほど地盤が強くなるイメージがありますが、時間の経過と液状化しない地盤は連動しない点にご注意ください。
| 条件 | 主な場所 | 液状化に強い理由 |
|---|---|---|
| 適切な地盤改良をしている土地 ・砕石などで水圧を逃がす「液状化対策工法(砕石パイル等)」を実施した土地 ・支持杭(鋼管杭など)で建物を支えている土地 | 土地ごとに異なる | 固い地盤(支持層)まで杭を届かせて建物の沈下・傾きを防ぐか、地盤改良によって土の締まりを強化し、液状化そのものを抑え込んでいる |
| 地下水位が十分に低い土地 | かさ上げした高台造成、丘陵地を切り拓いたニュータウン | 液状化の原因となる水がない層(不飽和層)は原理上液状化せず、上部に厚い乾いた層があることで深部からの噴砂や被害を物理的に防げる |
埋立地での地震対策は「地盤改良・耐震性」両方重要

「耐震等級」は建物が揺れに耐えて倒壊しないための性能で、「耐震等級3」は、数百年に一度程度の極めて稀な地震の1.5倍の力でも倒壊・崩壊しない水準です。
一方、液状化は地盤が建物を支える力を失う現象なので、どれだけ耐震性が高い家でも、地盤が沈めば家ごと傾きます。
そのため、住宅建築の際には「地盤改良・耐震性」両方のアプローチで地震対策をする必要があり、この点は埋立地以外の土地でも同様です。
一般的な宅地では「スウェーデン式サウンディング試験(スクリュー付きの棒を地面にねじ込んで硬さを測る方法)」で地盤調査をするのですが、この調査方法では液状化しやすいかどうかを判定するための「土質・粒度・地下水位」の状態を確認できません。
埋立地では「土を採取するボーリング調査が必須」と考えておきましょう。
地盤調査の結果に応じた主な対策は、以下のとおりです。
| 主な対策 (費用の目安) | 内容と特徴 |
|---|---|
| 配管の可とう継手 (数万円〜十数万円程度) | ・給排水管の接続部に柔軟な継手を採用することで、地盤沈下による配管の破断を防いで生活インフラ(水・トイレ)を維持する。 ・比較的コストを抑えられる |
| 高剛性なベタ基礎 (数十万円程度) | ・コンクリートの厚みや鉄筋量を増やし、基礎のねじれ剛性を高める。 ・地盤が部分的に抜けても基礎が割れにくく、家全体が一体で傾くため地震後の水平修復が可能になる。 |
| 小口径鋼管杭 (約100万〜150万円程度) | ・固い地盤(支持層)まで鋼管を打ち込み、建物を支えて建物の傾きや倒壊を防ぐ(周囲の敷地沈下には注意が必要)。 ・一般的な地盤補強として広く使われている。 |
| 砕石パイル工法 (約100万〜180万円程度) | ・地中に天然砕石の柱を配置する戸建向けの液状化対策で、地震時の水圧を砕石の隙間から逃がして液状化そのものを抑え込む。 ・鋼管杭と同等の予算で施工が可能 |
本来は地域全体で液状化対策を完成させるのがベストですが、地域が一体となっての液状化対策は合意と費用の壁が高いのが現実です。
実際、東日本大震災後に浦安市で、地域一体の液状化対策「市街地液状化対策事業」が実施され補助金事業も打ち出されましたが、対象数千戸のうち、液状化対策工事が完了したのは数十戸のみでした。
周囲の地盤を変えることは難しいからこそ、ご自身の敷地に関しては家を新築する時点で「強固な地盤・耐震性」を確保しておくことが大切です。
地震対策だけではなく「復旧力」も必須
地震発生後には、建物の被害だけではなく「ライフラインの停止」によって生活が大きく制限されます。
【例:東日本大震災の浦安市】
- 液状化で水道管の継ぎ手が抜けるなどの漏水が相次ぎ、最大約3万3,000世帯が断水。完全解消は約1ヶ月後だった
- 約1万2,000世帯では下水道が使えず(トイレが流せない)、応急復旧まで約1か月だった など
できることなら、避難所を利用せず、在宅避難で日常生活を取り戻していきたいですよね。
そのため、地震に強い家づくりでは、「地盤改良・耐震性」に加えて「地震後の復旧力」も非常に重要です。
地震に強い家づくりの設計段階で、以下の復旧力の確保をご検討ください。
- 電気:太陽光発電と蓄電池で、停電中も冷蔵庫・照明・スマートフォンの充電を確保する
- 水:飲料水の備蓄に加え、基礎に貯水タンクを設置する方法もある
- トイレ:下水道の復旧に1か月かかる前提で、携帯トイレを家族分(1人1日5回×1週間以上)備蓄
- 室温:断熱性能・気密性能が高く、パッシブデザイン※を取り入れた住宅は、停電時も室温が急激に変化しにくく、在宅避難がしやすい
※パッシブデザインとは、自然の力を活用して一次エネルギー消費量を抑える設計手法のことです。
沿岸部では高潮・津波被害の想定や対策も必須
海に面した埋立地では、高潮と津波の想定も確認が必要です。
実際に、埋立地の代表と言っても過言ではない東京湾沿岸では、台風や大雨・地震などによる高潮・津波の被災想定がされています。
【例:千葉県の東京湾沿岸】
- 高潮:浦安市から館山市までの東京湾沿岸の市町で「最大浸水深:約10m」。浸水が1週間以上続く場所もある
- 津波:浦安市・市川市で4.0m、船橋市3.6m、千葉市美浜区3.4mなど
こちらの記事で、南海トラフ地震発生時に、千葉県では津波がどこまで到達するのかをご確認いただけます。
〈関連ページ〉南海トラフ地震で千葉県の津波はどこまでくるのか|特に危険度が高いエリア、ハザードマップ活用法
埋立地で液状化現象が起こりやすい場所・揺れやすい場所の調べ方|例:千葉県の東京湾沿岸

千葉県の東京湾沿岸で液状化が起こりやすい場所・揺れやすい場所は、主に浦安市や千葉市美浜区などの埋立地・沖積の谷(氷河期にできた浸食谷を柔らかい沖積層が埋めている場所)です。
特に過去の地震(1987年千葉県東方沖地震など)で一度液状化した場所は地層が緩んでいるため、液状化対策が完了していない土地は注意が必要です。
液状化が起こりやすい場所・揺れやすい場所の情報は、千葉県が発信しています。
- ちば地震被害想定のホームページ:地域と地震被害のリスクを選択してお住まいの場所の地震被害想定を確認できる
- 千葉地震防災地図:震度に応じた液状化のしやすさを、画像の地図上で確認できる(地図は千葉県北部地域・千葉県南部地域に分かれています)
〈参考〉千葉県ホームページ「液状化しやすさ・危険度マップ、揺れやすさマップ」
また、国土地理院の「重ねるハザードマップ」では「地形分類(土地の特徴・成り立ち)」を確認できるため、「埋立地と自然地層の境目」「沖積の谷の範囲」を知りたい場合はご活用ください。
〈参考〉ハザードマップポータルサイト「重ねるハザードマップ」
ただし、一般的なハザードマップは250mメッシュ(地図を縦横約250m四方の格子状の区画(マス目)に分割した精度)で作成されていて、敷地ごとの災害リスクまで確認することは難しいのが実情です。
そのため、ハザードマップで確認できるのは「敷地周辺の情報」とお考えください。
こちらの記事で、千葉県で地盤が強い場所もご確認いただけます。
〈関連ページ〉千葉県の地盤が強いところは「液状化しやすさ・揺れやすさマップ」で確認|住んではいけない土地とは
埋立地に建てた家が液状化被害を受けたら復旧は可能か|復旧費用の目安

埋立地に建築した家が液状化の被害を受けた場合、多くのケースでは復旧が可能です。
液状化による戸建ての被害は、「倒壊」ではなく「沈下と傾き」が中心で、一般的に傾いた家は水平に戻す工事ができる可能性が高いためです。
【例:東日本大震災時の浦安市】
液状化で被害を受けた住宅は約8,600棟にのぼりましたが、「全壊:10棟」でした。
- 全壊:10棟
- 大規模半壊:1,519棟
- 半壊:2,121棟
- 一部損壊:4,964棟
〈参考〉千葉県ホームページ「東日本大震災液状化報告書│環境研究センター」第3報:千葉県内の液状化-流動化現象とその被害の概要及び詳細分布調査結果(第3報)-浦安地区(1)-
【傾きと家の状態の目安】
| 傾き | 意味 |
|---|---|
| 3/1000未満 (1mで3mm) | 構造上の欠陥がある可能性は低い |
| 6/1000以上 (1mで6mm) | 構造上の欠陥がある可能性が高い |
| 1/100以上 (1mで1cm) | 罹災証明で「半壊」 (1/60以上で大規模半壊、1/20以上で全壊) |
〈参考〉
・傾き3/1000未満、6/1000以上:国土交通省ウェブサイト「平成12年建設省告示第1653号」
・1/100以上:内閣府防災情報のページ「災害に係る住家の被害認定」第4編 液状化等の地盤被害による被害
なお、液状化による家の傾きを復旧する費用の目安は以下のとおりです。
| 工法 (費用の目安) | 内容 |
|---|---|
| 土台上げ(ジャッキアップ)工法 (250〜350万円程度) | ・基礎と土台の間にジャッキを入れ、建物だけを持ち上げる ・工期:約2週間 |
| 耐圧版工法 (350〜500万円程度) | ・基礎の下を掘り、コンクリート板を受け台にして基礎ごと持ち上げる ・工期:約3週間 |
| 鋼管圧入(アンダーピニング)工法 (700〜1,000万円程度) | ・基礎の下に鋼管杭を固い地盤まで押し込み、支えながら持ち上げる ・工期:約1ヶ月 |
家の傾きを復旧する費用は高額ですが、地震による液状化で家が傾いた場合、地震保険に加入していると補償を受けられます。
地震保険の液状化被害の認定基準は以下のとおりで、沈下10cm超が認定対象です。
【木造住宅の認定基準】
- 一部損:傾き0.4/100(約0.2度)超
- 全損:1.7/100(約1度)超 など
〈参考〉一般社団法人日本損害保険協会>「地震保険 損害の認定基準について」11ページ
地震保険は「耐震等級3」の認定取得(証明書が必要)によって保険料が50%割引されるため、耐震等級3を標準仕様で提供しているハウスメーカーを選んで家づくりを依頼することをおすすめします。
千葉の地盤を熟知していて万全の液状化対策を依頼できるハウスメーカーをお探しの方は、木ここち家ラボへお問い合わせください。
木ここち家ラボは標準仕様で耐震等級3を提供しているハウスメーカーで、注文住宅・規格住宅・分譲住宅の選択に関わらず耐震等級3の家づくりが可能です。
埋立地の家やマンションにはメリットもある

今回は埋立地のリスクに注目して、「地震に強い家を建てられるか」をご紹介してきましたが、埋立地にはリスクだけではなく、選ばれる理由もあります。
| 立地タイプ | 主なメリット |
|---|---|
| 【臨海部埋立地】 東京湾岸(豊洲・有明・晴海)、横浜みなとみらい、神戸ポートアイランドなど | ・都心近接性と完全なフラットアクセス ・開放的な眺望と水辺空間(運河・緑地) ・電線地中化や広幅員道路による高い街区防災力 |
| 【内陸・丘陵部の盛土造成地】 多摩ニュータウン、横浜内陸部、千里ニュータウンなど | ・津波・高潮・河川氾濫など水害リスクの低さ ・1区画あたりの広さと整然とした低層住居環境 ・緑道(歩車分離)による子どもの登下校の安全性 |
| 【平野部・低地の埋立地】 既成市街地周辺の区画整理地、平野部の農地転換エリア | ・坂道のない平坦地によるバリアフリー性 ・高台エリアと比較した土地取得コストの割安感 ・既存市街地の交通・商業インフラへの接続性 |
こちらの記事で、千葉県で住みやすい場所をご確認いただけます。
〈関連ページ〉千葉県で老後に住みやすい街5選|生活費の違い、災害リスク、住みにくい街の見極め方も解説
埋立地の土地を購入して家を建てる場合には、ご自身で液状化対策をはじめとする防災対策を整備できますよね。
埋立地での土地購入判断に不安をお持ちの場合には、早い段階でハウスメーカーを選定して、地盤の状態の確認からサポートをご依頼ください。
一方で、マンションは液状化対策をコントロールできない不安があると思いますが、マンションは固い地盤まで杭を打ち込んで建築されています。
実際に、東日本大震災発生時には、浦安市のマンションでも建物本体に目立った被害はありませんでした。
液状化の被害が大きかったのはマンション建物のまわりの地盤で、最大80cm沈下し、配管などのライフラインが停止して復旧に時間がかかった事例があります。
また、マンションでは「被災後の修繕の程度や内容」「今後の災害リスク対策の内容」を、ご自身だけで決めることはできません。
一戸建てとマンションどちらを選択するか迷っている場合には、「日常生活の利便性」「ご自身の資産に対するコントロール力」のメリット・デメリットをよく比較し、ご自身の価値観により適合する選択をすることをおすすめします。
千葉の埋立地に家を建てることについて、迷いや不安をお持ちの方は、木ここち家ラボへお問い合わせください。
土地探しの段階から、ご家族をサポートいたします。
まとめ
埋立地で地震に強い家を建てることは、可能です。
ただし、液状化に対する抵抗力が高い土地を見極める必要があり、土地の状態に応じて地盤改良が必要です。
また、家を建てる際には、「被災後の復旧力」まで意識した設計が可能ですので、ぜひ地盤調査・地盤改良までこだわりをもって家づくりをサポートしてくれるハウスメーカーを選択してください。
埋立地には膨大な宅地があり、高い生活利便性などの魅力がたくさんあります。
「埋立地だから」という理由だけで魅力を感じている土地を諦める必要はないため、今回ご紹介した情報を参考にして、地震に強い家を建てられるかを見極めていただけると幸いです。



